飛行機で長時間移動して、飛行機から降りて歩き出した途端に呼吸困難になってしまった。
出張や旅行、里帰りなどで飛行機や電車、車に長時間乗っていて心配になるのが、このように突然症状が起きるエコノミークラス症候群です。2016年4月に起きた熊本地震の際には車内で非難生活をされていたかたがエコノミークラス症候群で亡くなるなど命に関わる大変危険な病気なのです。
なってしまってからでは遅いのです。エコノミークラス症候群についてしっかりと学んで、その予防と対策を頭に入れておきましょう。

エコノミークラス症候群とは

エコノミークラス症候群の「エコノミークラス」とはそう、飛行機のエコノミークラスです。エコノミークラスの座席に長時間座ったままの状態でいると、下半身の血流が滞って静脈血栓(静脈の中に血の塊)ができてしまう場合があるため、この症状を「エコノミークラス症候群」という名称がつけられました。
一方、脚や下腹部に血栓ができている状態のことを「深部静脈血栓症」と言います。血栓ができても特に自覚症状はないのですが、その血栓が腫れた状態で血管を循環して肺動脈内に入ると詰まってしまうことがあります。この状態のことを「急性肺血栓塞栓症」と言います。
また、深部静脈血栓症と急性肺血栓は同じ病気を違った部分から見ているものなので、この2つの病名を合わせて「静脈血栓塞栓症」と言うようにもなっています。
つまりエコノミークラス症候群は、長時間同じ姿勢でいることで起こる静脈血栓塞栓症なのです。
飛行機のキャラクター

誰にでもエコノミークラス症候群になる危険あり!

その名称から飛行機のエコノミークラスに座っている時にしか発症しないし、自分は飛行機に乗らないから大丈夫・・・と思っているあなた!エコノミークラス症候群はエコノミークラスに乗っている時だけに起こるものではないのです。
ある有名サッカー選手がエコノミークラス症候群になったことがありましたが、その時座っていたのはビジネスクラスでした。
また、飛行機以外でも長時間運転していたトラック運転手やバス運転手がエコノミークラス症候群で亡くなった例やデスクワークをしていた男性がエコノミークラス症候群で倒れたケースもあります。さらには韓国では長時間ゲームをしていた20代の男性が亡くなるということもありました。
そして、災害や震災時には車中での生活を余儀なくされてエコノミークラス症候群を発症されるかたもいらっしゃいました。
このように、エコノミークラス症候群は誰にでも成り得る病気で、特に
  • 旅行や仕事で飛行機、バス、車、電車で長時間移動するかた
  • トラック運転手など仕事で長時間運転するかた
  • 長時間椅子に座りっぱなしのデスクワークがメインのかた
など、6時間以上同じ姿勢でいる事が多いかたは常に注意をしなければなりません。
デスクワークの女性

どうして血栓は脚にできるのか?

血栓が脚にできやすい理由は地球の重力に関係しています。血液が心臓から送り出されるときは動脈を、心臓へ戻るときは静脈を通ってぐるぐる循環しています。
心臓より高位置にある脳や首の静脈からは重力の力を使って何の苦もなく心臓へと流れ落ちていきますが、心臓より下にある脚などの静脈からは重力に逆らって心臓まで血液を押し上げなければなりません。
どのようにして押し上げているのかというと、静脈周辺の筋肉が動いて静脈を緩めたり収縮させて血液を持ち上げているのです。
でも、長時間座りっぱなしの状態だと静脈周辺の筋肉が動かず、血液がうっ滞しやすい状態になります。なかでも、
  • 肥満体質のかた
  • 血液中の悪玉コレステロール(LDL)値が高く、ドロドロ血のかた
  • 食べ過ぎで特に甘いものが大好きなかた
  • タバコを吸うかた
  • お酒を毎日飲むかた
  • 生まれつき血栓ができやすいかた
  • 大きな手術経験のあるかた
  • 脚を組むのが癖になっているかた
などは特に血液が滞りやすく、血栓ができやすい人です。問題は脚の血栓には自覚症状がほぼないことです。血液のうっ滞に気づかないためにその進行も全く気付かず予防も難しいのです。だから悪化するまでわからずに、呼吸困難などが発症したらすぐに死に至ることもある―――非常に恐ろしい病気なのです。

エコノミークラス症候群の初期症状と治療法

エコノミークラス症候群の初期症状を把握しておけば、最悪な状態になる前に対応することができます。以下のような症状がある場合はエコノミークラス症候群の可能性があるので、すぐに病院で受診することをおすすめします。
  • 脚が片側だけむくむ・だるい・痛む
    血流が滞っているのでむくみやすくなりまsす。むくみというのは普通左右で同じくらいなのですが、片側だけ酷くむくんでいる場合はそちら側の脚に血栓ができているかもしれません。また、むくみだけでなく、腫れや痛み、色が赤く変わることもあります。
  • 動悸・息切れ胸痛がする
    血液が滞ると心臓に負担がかかり、動悸や息切れ、胸痛がします。同じ姿勢で長時間いた後に急に心拍数が増えたり呼吸が荒くなります。
これらはエコノミークラス症候群の初期症状です。小さなサインも見逃さないようにしましょう。
ショックを受けるネコ

【エコノミークラス症候群の検査内容】

エコノミークラス症候群かどうかを診断するうえで、病院では次のような検査が行われます(通常は1~3の順に検査されることが多いようです)。
肺血栓塞栓症の検査
肺エコーやCTなどの機械を使って肺動脈に血栓が詰まっていないかを調べます。
深部静脈血栓症の検査
肺動脈に血栓が見つかった場合、血管エコーで脚などの静脈にも血栓がないかを調べます。
血液検査
動脈内の血液中にある酸素・炭酸ガスの濃度を調べます。また、体内に血栓ができると血液中のD‐ダイマー値が上がるため、この数値も確認します。
肺血栓塞栓症と深部静脈血栓症の検査で異常が診られなければ、エコノミークラス症候群であっても軽度なので、現段階でどうこうなるとは考えにくいです。
でも、仕事柄や日常生活で長時間同じ姿勢で過ごすことが多いかたは、常にエコノミークラス症候群になる危険性を秘めていることを忘れないでください。

エコノミークラス症候群の治療法

説明するパンダ

エコノミークラス症候群と診断された場合、治療方法はその症状の状態によって3つあります。

運動療法

軽度の症状には運動療法を行います――といっても誰でもできる簡単な動作です。
1.両足を床につけて椅子に座る
2.つま先はそのままでかかとだけを上にあげる **限界まで上げるのがポイント
3.かかとを上げた状態で数秒停止し、ゆっくりと元に戻す
この動作によって「ヒラメ筋」という脚の静脈周辺にあるふくらはぎの筋肉が鍛えられ、血管の収縮もしっかり行えるようになって血流がよくなります。この運動を1~2時間に1回、ふくらはぎが疲れる程度行います。

薬物治療

症状が中程度の場合、ヘパリンという注射と、ワーファリンという飲み薬を使って抗凝固療法を行います。
ただ、薬によって血液がさらさらになって血栓予防としては効果がありますが、脚だけでなく全身の血液が固まりにくくなるというデメリットがあります。ですから副作用として、出血しやすくなったり痣などの症状が起こりやすくなる可能性もあります。

外科手術

重度の場合は血栓を摘出する外科手術が行わることがあります。ただ、カテーテルを使って血管を通すという高度な手術であり、熟練したい技術やそれなりの設備が必要なため、手術可能な医療機関は限られています。

エコノミークラス症候群にならないための予防対策法

チェックポイントと言っているネコ

エコノミークラス症候群の原因①「水分不足」への対策

エコノミークラス症候群は水分不足によって起こります。誰にでもできる最も簡単な予防法は「こまめに水分を摂る」ことです。
なぜかというと、水分を摂ると一時的に血液が薄くなるからです。なぜ一時的かというと、私たちの体には正常に保とうとする恒常性が備わっているため、薄まった血液も元に戻ります。だから「こまめに摂取する」ということがとても大事なのです。
**水分と言ってもコーヒーなどのカフェイン類は利尿作用があり水分を体から排出してしまいますし、アルコールも脱水症状を誘発してしまうのでエコノミークラス症候群対策としての水分補給には向いていまません。
特に飛行機の機内はフライト中の湿度が5~15%程度とサハラ砂漠よりも乾燥していて、この湿度内にいた場合に人間は1時間に約80mlの水分が奪われています。ですからフライト中は最低でも1時間に100mlの水分を補給するとよいでしょう。

エコノミークラス症候群の原因②「脚の運動不足」への対策

エコノミークラス症候群は脚に血液が溜まってしまうことで起こります。ですから、できれば1時間に1回は足を動かしたりストレッチすることで、脚に溜まった血液が心臓に戻りやすくなります。
具体的な運動としては、先ほど治療法で出てきた「足を床につけてかかとだけ上げる」方法以外に、
  • ふくらはぎを揉む
  • 足首を回したり足の指を動かす
  • 脚の屈伸をする
  • 足踏みをする
など、とにかく脚、特にふくらはぎの筋肉を使うことで血流がよくなります。

血栓予防に!「ナットウキナーゼ」と「フコイダン」

血栓予防にいいとされる栄養素は
  • ポリフェノール(ベリー類、緑茶、黒豆など)
  • 水溶性食物繊維(ひじき、切り干し大根、おからなど)
  • ベータカロテン(かぼちゃ、人参、モロヘイヤなどの緑黄色野菜)
  • ビタミンC(ブロッコリー、いちご、ピーマンなど)
  • ビタミンE(うなぎ、アーモンド、アボカドなど)
などがありますが、サプリメントで対策するのもひとつの手です。特に「ナットウキナーゼ」と「フコイダン」は血栓予防に効くと言われています。
納豆のネバネバに含まれている成分でたんぱく質の「ナットウキナーゼ」には血栓の元となる成分を溶かす作用があります。血栓ができやすい時間帯は深夜から早朝なので、夜寝る前にナットウキナーゼのサプリメントを摂取すると一定の効果が期待できそうですね。
また、昆布やわかめといった海藻のぬるぬるに含まれている成分「フコイダン」にはウイルスや細菌から体を守ってくれる作用があります。日本癌学会でも『ガン細胞に選択的に働きかけて自然死に導く作用がある』と発表されたほどです。
血栓にいい理由としては、ヘパリンよりも高い抗血液凝固作用があるからです。
ナットウキナーゼもフコイダン血栓によさそうですが、その効果がわかったのは1980年代、1960年代とどちらも最近で信頼できるデータは多くはありません。
ですから値段も高いこれらのサプリメントを摂り入れるよりは安価でしかも納豆には血栓予防成分のビタミンK2、海藻には高いミネラル成分など他の栄養素も一緒に摂取できるので、納豆や海藻そのものを食事に取り入れてみた方がいいかもしれません。
納豆

まとめ

エコノミークラス症候群は飛行機を利用するかただけでなく、長時間同じ姿勢でいることが多いかたであれば誰にでも起こり得る、そして最悪の場合は急死という危険性も秘めた非常に恐ろしい病気です。

あまり自覚症状がないのも症状が悪化しやすい原因ですが、ちょっと知った変化や異常に気付いたら迷わず病院へ行きましょう(できれば循環器科、循環器内科、血管内科を受診してください)。
長時間座っている状態にあるときは1時間に1回程度水分を補給し、ふくらはぎを揉んだりしてヒラメ筋を動かすことがエコノミークラス症候群対策になります。トイレなどに行くのも良いでしょう。
また血栓予防によいとされる海藻類や、特に納豆の主成分であるナットウキナーゼは気軽に試せる血栓症対策として人気で、中でも「納豆博士」というサプリメントは、「ナットウキナーゼなら納豆博士でしょ」というくらい識者の間では有名な商品ですので、「医者に行くのは面倒だ」「毎日納豆食べるのは苦痛だ」という方にはうってつけの商品かと思います